ヒトへの展開〜期待される効果

ヒトへの展開〜期待される効果

ヒトへの展開?期待される効果

特定保健用食品では、
◎お腹の調子を整える(整腸効果)
◎血圧が高めの方に適する
という表示が許可されたヨーグルトが市販されています。

研究レベルでは、
◎花粉症の症状改善
◎アトピー性皮膚炎の抑制
◎メタボリック症候群の抑制(血中コレステロールの低下・内臓脂肪の低減効果)
◎皮膚機能の改善 (美肌効果・老化防止)
◎免疫機能の活性効果 (インフルエンザ感染予防など)
◎胃のピロリ菌の抑制
◎大腸がんなどの発がんリスクの低減効果
◎ストレス軽減効果
など、魅力的な効果が報告されています。

厳密には菌株レベルでの裏付けが必要

しかし、乳酸菌やビフィズス菌のすべての機能が、すべてのヒトに効果があると考えるのは危険(無謀)であり、菌株レベルの裏付けが必要です。効果が厳重に審議されている薬でも、その効き目には個人差があるので、ある機能をもった乳酸菌やビフィズス菌が、すべてのヒトに優れた効果をもたらすかどうかは疑問です。

ヨーグルトの安全性を保証するのは、メーカー側の責任、
自分にあった機能のヨーグルトを選ぶのは、消費者の任務と言えましょう。

脳と腸内細菌との相互干渉について

通常の腸内細菌叢をもつマウスと、腸内細菌がまったくいないマウス(無菌マウス)を用意し、それぞれの成長を観察したところ、腸内細菌をもたないマウスは、成長とともに攻撃的となり、危険な行動を示すことがわかりました。

その無菌マウスに、成長初期と成熟後に腸内細菌を植菌すると、成長初期に腸内細菌を導入したマウスは、その後は普通のマウスと同じような行動を示したのに対して、成熟後に腸内細菌を導入したマウスは、腸内細菌叢を導入しなかったマウスと同じような行動を示しました。

このことから、腸内細菌が、初期の脳の発達に影響していることがわかります。

腸内細菌が初期の脳の発達に影響することの実験
  • この腸内細菌と脳の相互干渉という結果は、精神病の薬の開発や副作用という問題の解決に役立つ?
  • 腸内細菌が脳の活動に影響を与えているため、精神病を治療するために脳に直接はたらく薬を開発するのではなく、腸内細菌にはたらく薬を開発することで副作用を防ぐことができる?
  • 腸内細菌の状態が、脳内の遺伝子発現に影響を与えていることから、腸内細菌叢は、人格にも影響を与える?

上記考察から『食事が腸内フローラを作り、変える』という帰結が導き出せます。「食育の重要性」が結論付けられます。

ヨーグルトから、生きた細菌を摂る意義と重要性を考える時代

我々は、まだまだ腸内細菌すべての性質や役割を認識しているとは限らないので、属や種レベルでの「善玉菌・悪玉菌」説は、慎重に考える時期に来ています。

腸内細菌の研究は、前述のとおり1900年初頭からトップレベルの細菌学者によって開始され、その後の100年間で、様々なことが解明されてきました。そして、2000年以降、次世代シークエンサー、GC/MS(ガス・クロマトグラフを直結した質量分析計)やNMR(核磁気共鳴装置)が急速に進歩し、その先端的な技術が腸内細菌叢研究にも取り入れられたことで、「Nature」、「Science」、「Cell」といったビッグジャーナルに、どんどん掲載される時代になりました。

不妊は、持って生まれた病気ではなく、腸内細菌叢が関与する現象かもしれません。腸内細菌叢を大事にすることは、次世代の日本を考える上でも、重要な話になってきています。

腸内細菌叢が生体に及ぼす影響について、その作用機序が詳細に解明されて、ヒトがなぜ健康でいられるのか、そして、腸内常在細菌の特性が理解されることで、炎症性腸疾患・自己免疫疾患・アレルギーなどの難治性疾患の治療が見い出される時代になりつつあります。


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