実用化への流れ

実用化への流れ

ヒトの糞便組成と腸内細菌叢が宿主を支配する可能性

ヒトの腸には、1gあたり1兆個の腸内細菌が存在します。糞便に占める割合は、30%にも上ります。

こうした腸内細菌叢は、宿主であるヒトの健康状態に少なからず影響を及ぼしていると考えられます。下の実験では、健常な無菌マウスに、肥満マウスと肥満のヒトから取り出した糞便内腸内細菌叢を移植すると、健常だったマウスが肥満になることが確認されています。

腸内細菌叢が宿主を支配する可能性を示す実験

ヒトやイヌも、個人ごとに能力や性格が違うことを考えれば、乳酸菌やビフィズス菌の効果が、菌株ごとに大きく異なり、その効果の大小や有無を、菌株レベルで論じる必要性があります。

Bifidobacteria can protect from enteropathogenic infection through production of acetate
ビフィズス菌が産生する酢酸による病原性大腸菌感染症の予防
Fukuda S, Toh H, Hase K, Oshima K, Nakanishi Y, Yoshimura K, Tobe T, Clarke JM, Topping DL, Suzuki T, Taylor TD, Itoh K, Kikuchi J, Morita H, Hattori H, Ohno H
Nature, 469, 543-547 (2011)

健常な腸内細菌叢を構成する細菌は、宿主に対して功罪の両面の作用あり

ヒト消化管に常在し、一般には、悪玉菌として扱われるクロストリジウム属やバクテロイデス属が、免疫抑制に必須の細胞である制御性T細胞(Treg細胞)の産生を強力に誘導することを明らかになってきました。大腸菌についても同様の視点があります。つまり、「悪玉菌と善玉菌」という「勧善懲悪説」で論じられてきた腸内細菌について、健常な腸内細菌叢を構成する細菌は宿主に対して、「悪玉菌」と考えられてきた細菌にも、功罪の両面の作用があるようです。

Treg induction by a rationally selected Clostridia cocktail from the human microbiota
大腸に常在する芽胞形成菌(Clostridium属など)による制御性T細胞の誘導:自己免疫疾患(関節リウマチなど)やアレルギーの新たな治療法に応用の可能性
Atarashi K, Tanoue T, Suda W, Oshima K, Nagano Y, Nishikawa H, Fukuda S, Saito T, Narushima S, Hase K, Kim S, Fritz JV, Wilmes P, Ueha S, Matsushima K, Ohno H, Bernat Olle B, Sakaguchi S, Taniguchi T, Morita H, Hattori M, Honda K
Nature (2013) doi:10.1038/nature12331

※Treg細胞とは、多発性硬化症や関節リウマチなどの免疫システムの行き過ぎた応答(自己免疫疾患)を抑制するのに重要な役割を果たすT細胞です。Treg細胞数の増加は、異常な免疫応答を抑制し、自己免疫疾患の症状の軽減や炎症性腸疾患、アレルギー疾患の治癒に役立ちます。


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